大会結果 2012年度大会 大会レポート
2012年8月27日掲載
※画像はクリックすると大きくなります。専任のカメラマンがいなかったため画質があまり良くありませんが、ご了承ください。
開場、試走、そして開会式
『7時45分に開場します』若干興奮したスタッフの声が聞こえた。覗いてみると狭くは無いはずのエレベーターホールは出場者と観戦者で既に満杯。一年振りのルネサス大会。出場する側のボルテージも相当上がっているようだ。そして、それを迎える運営スタッフも心なしか緊張の様子。良い大会になりますように。
おはようございますの声に促されて受付を済ませた選手たちは、ビブスを手に控室へと急ぎ足。各々自分の場所を確保しつつ、『お久しぶり』『どう?調子は』なんて会話があちこちで飛び交っている。北は北海道から南は沖縄県まで。大学生、会社員、高校の先生、そして大学の教授まで様々。みんなマイコンカーにはまってしまった熱きマイコンカー愛好者。軽い挨拶の後はいきなりの技術論。今朝方まで続けたであろう最終調整がうまく収束せず、その問題点を素直にぶつける者。それを自分のことのように受け止めて一緒に悩み、考える者。俺が俺がではなく、俺もお前も良い記録を出そうぜ。お互い決勝には残りたいよな。なんて雰囲気があちこちで見られる。状況、情報、技術の交換の場。そして交流の場。開放的で仲間意識に満ちているこの控室の雰囲気が、実はルネサス大会の一番の売りなのかもしれない。
そうこうしてる間に試走の列が出来上がってきた。今回の大会は一日で試走、予選、決勝を行うという強行日程のため、受付から開会式までの一時間弱が公式試走時間。しかも試走コースはそのまま大会コースとなる。よって、試走は大混雑するかと思ったが思いのほか空いている。これが大人の大会なのか、それとも予選時に何回でも自由走行して良いですよという予選形式の影響なのか、思いのほかゆったりと試走時間が過ぎていった。
『動画の再生がうまくいきませんねぇ』司会者がちょっとうろたえている。開会式の目玉だった米国人のルネサス幹部からの英語でのビデオメッセージ(日本語字幕つき)の再生がうまくいかない。なんとか再生できたものの、開会式に参加して頂いた選手の皆さんにはこの間、待たせることになってしまった。申し訳ない。ただ、遠くアメリカからのマイコンカーラリーに対するものの見方は、選手の皆さんのためになったのではないかと思う。その後、外尾実行副委員長からの出場選手へのお礼と激励、そして大会への期待の言葉で開会式は無事終えた。
予選(タイムアタック方式)
定刻9時に予選が開始された。今回の予選は、自由走行のタイムアタック方式が採用された。走行順番は決めず、INスタート/OUTスタートも決めず、加えて時間が許す範囲で何回でも走行して良いという方式。この自由走行の中で最高のタイムを各自の予選タイムとする。但し、決勝トーナメントはINスタート/OUTスタートは抽選で決定されるので、予選走行時にINとOUTの両方を走らせてコースの癖を把握し、マシンの調整を行っておく必要がある。決勝トーナメントでは走る毎に詳細な調整をする時間は無い。時間的に余裕のある予選で決勝を見据えたマシンの調整が必要になってくる。
予選の前半は試走の延長線上のような雰囲気でマシンの調整結果を試しているような感じだ。記録されるタイムも20秒前後。密かに期待している15秒前後(平均速度4m/秒)のタイムはこの時間帯ではまだまだ出てこない。完走率も低いまま。そして、なにより戦前から強豪と噂されている方々がコースに現れない。走行順番に縛られない予選方式のため、じっくりと愛車の点検をし、調整に精を出しているのだろうか。会場正面に設置された、決勝に進出できる32名を表示する表がなかなか埋まらない。
予選後半、やっと早いマシン達が姿を見せ始めた。20秒前後のタイム表示で『ちょっと、どうなの』的な雰囲気を醸し出していた予選結果表にいきなり16秒、15秒台のタイムが飛び込んできた。じっくり調整して、ズバッと結果を出す強豪たちの走りが開場を沸かせる。いとも簡単に好タイムを叩き出す。でも、マシンの走行に対しては非常に真剣。特にスタート時には近寄り難いほどの雰囲気に包まれる。スタートしてからは何の手出しも出来ないマイコンカーラリー独特の世界。予選にもかかわらず、司会者はただただじっとそのスタートを見守っている。
今回、ユニークな設計のマシンが幾つか参戦してくれた。センターライン検出に画像処理を用いたもの、電池を2本に絞ったものなどなど。タイムが少し足りずに決勝進出を逃した東京都の遠藤さんの電池2本方式。次回の大会までには更にブラッシュアップして、予選突破、決勝進出してくれることを期待する。昼食時間も設けずに続けた予選の結果は、最高タイム15.40秒を出した熊本から参戦した中村さんが第1位。これに4/100秒の僅差、15.44秒で長野県の小池さんが第2位。第3位にはこれも3/100秒差、15.47秒で愛知県の星野さんがつけた。決勝進出32台のうち、15秒台が8台、16秒台が13台。1位の15.40秒から32位の18.28秒まで2.88秒の間に32台がひしめき合うという非常に高レベルの予選となった。決勝トーナメントは、予選1位と32位、2位と31位の対決というジャパンマイコンカーラリー(高校生大会)恒例のトーナメント方式。熱戦が期待される。
決勝(トーナメント方式)
決勝トーナメント表がスクリーンに映し出された。INスタートとOUTスタートは、毎試合に抽選で決定される。今回はトランプを抽選の道具に使った。赤いカード(ハート、ダイヤ)を引けばINスタート。黒いカード(スペード、クラブ)を引けばOUTスタートという具合。簡単で公平な、良い方法かもしれない。さて、一回戦第一試合は予選1位の中村さんと32位の辻さん。いきなり15.86秒と予選時の好調を維持した中村さんが順当に勝ち上がる。次の第二試合は予選16位の香川県の本行さんと17位の富山県の松井さん。予選の結果がお隣通しのここが一番の接戦になるはず、という予想どおり、両社相譲らずの大接戦。制したのは本行さんでその差0.22秒だった。そして第五試合、一昨年のルネサス大会@秋葉原の優勝者である岐阜県の深澤さんが登場。深澤さんは予選で15.66秒の仕上がり。対するは香川県から参戦の藤阪さん。深澤さんが予選タイムを0.01秒縮める走りで勝ち上がった。予選2位の小池さんが決勝一回戦中の最高タイム15.43秒をマークして勝ち上がれば、負けじと予選3位の星野さんも15.71秒の走りで余裕の勝ち上がり。一方、予選23位で決勝に進んできた福岡県の徳永さんのマシンはユニークな画像処理マイコンカー。17.21秒の堅実な走りで一回戦を勝ち上がった。なお一回戦の完走率は24台/32台=75%と高い完走率だった。さすがに落ちる車は少ない。
続く二回戦。戦った16台のうち9台が15秒台で走り抜けた。さすがにここまで勝ち上がってきたマシンは早い。中でも一回戦で最高タイムを叩き出した小池さんは更にタイムを縮め15.33秒で三回戦=準々決勝に駒を進めた。小池さんは予選15.44秒、決勝一回戦15.43秒、そして二回戦15.33秒と、非常に緻密な調整で確実にタイムを縮めてきている。なお二回戦で一番会場が沸いたのは第二試合の岐阜県の井戸さんと埼玉県の田中さんの対決。これぞマッチレースという感じで、両者正々堂々のがっぷり四つの体勢でコースを走る大接戦。鼻面を合わせてのゴールイン後のタイマーは15.90秒と15.92秒を表示。2/100秒差で井戸さんが準々決勝に勝ちあがった。蛇足ながら完走率は14台/16台=88%。高速で走り抜ける、息詰まるようなレースの雰囲気がこの数値にも表れている。
さて、準々決勝。勝ち上がった8台はいずれも予選ベスト10に名を連ねていたマシン。さすがに番狂わせは無い。西日本勢が7台、対する東日本からは神奈川県から参戦の河野さんのみ。完全な西高東低。がんばれ東日本!と応援したい雰囲気(※出場台数の分布で関東、東北、北海道を東日本と定義しました)。第一試合は中村さんと井戸さん。予選からの最高タイムで上回る中村さんが15.45秒で井戸さんを下して勝ち上がり。続く第二試合は、これまた大接戦。15.66秒、15.65秒、15.52秒と着実にタイムを縮めてきた深澤さんと、直前の二回戦で15.52秒を記録した和歌山県の中岡さんの戦い。両者一歩も譲らず駆け抜けた結果は3/100秒差で深澤さんの勝利。15.46秒のタイムで準決勝に名乗りを上げた。第三試合は走る毎にタイムを縮めてきている小池さんと東日本期待の河野さんの戦い。小池さんがここでも準々決勝最速の15.37秒を叩き出して河野さんを退け、勝ち上がった。15.3秒台を確実に叩き出す小池さんのマシンにはただただびっくりするのみ。観客も拍手を忘れて、しばしシーンという状況。最後の第四試合は星野さんと、同じく愛知県から参戦の豊田さんの対決。ともに予選からのタイムは15秒台。ただし、決勝一回戦でコースアウトした豊田さんにほんの少しだけ不確定要素があるかも。結果は第二試合に負けず劣らずの大接戦。制したのは星野さん。3/100秒差の15.53秒で勝ちあがった。
準決勝。15.45秒の中村さん、15.46秒の深澤さん、15.37秒の小池さん、そして15.53秒の星野さんの4名。持ちタイムといい、マイコンカー経験度合いといい、堂々の四天王揃い踏みという感じ。熱戦が期待できそうだ。第一試合は中村さんのランサー11号と深澤さんのテスタープロトの対決。直前のタイムを見ても15.45秒と15.46秒、と全くの互角。ランサー11号はINから、テスタープロトはOUTから綺麗なスタートを切り、両者全く譲らずに綺麗に難所を走り抜けていき、デッドヒートの末、ゴールイン。結果は15.41秒で走破した中村さんが15.53秒の深澤さんを抑えて勝利。決勝進出。第二試合は小池さんの黒雲雀号と星野さんのHS-2012号の対決。決勝に入って、走るごとに0.1秒ずつタイムを縮めてきている星野さんがOUTスタート。片や15.3秒台の走りを手にした小池さんがINスタート。観客の期待の中、両者綺麗なスタート。スタッフ力作のコースを何事も無い様に走りぬける。だが、ここでも小池さんの黒雲雀号がその実力を遺憾なく発揮し、驚異の15.29秒という今大会最速タイム。15.51秒で食い下がった星野さんのHS-2012号を退けた。これで決勝は中村さんと小池さん、三位決定戦は深澤さんと星野さんに決定した。予選1位と2位が実力どおり勝ち進み、決勝戦で雌雄を決することとなった。
いよいよ決勝戦。と、その前に大事な三位決定戦。深澤さんと星野さんという東海対決。準決勝でのタイムは深澤さんが15.53秒、星野さんが15.51秒と星野さんに分があるが、過去の持ちタイムがそのまま勝敗に直結しないところがマイコンカーラリーの面白いところ。星野さんもうかうかしていられないはず。結果は、直前レースよりタイムを0.03秒縮めた深澤さんが15.50秒で勝利。星野さんはタイムを縮められず15.75秒で第四位に甘んじた。
さて、泣いても笑ってもこれが最後。決勝戦。参加80名の頂点に立つのは中村さんか小池さんか。この一戦を待っていた観客の皆さんに戦い終えた選手が加わって、観客席は立錐の余地も無い。加えて、ビデオカメラとデジタルカメラのレンズがじーっとコースに焦点を合わせている。いつもながらの決勝戦スタート前の期待に満ちた静寂。この静寂を破るかのようにスタートの合図音が会場に鳴り響き、INからランサー11号が、OUTから黒雲雀号が勢い良く走り出した。カーブ、クランク、レーンチェンジ、アップ&ダウン、そして直線と、スタッフが知恵を絞って設計したコースをいとも簡単に、滑らかに、そして静かに走り抜けていく。ランサー11号がOUTゲートを無事くぐり抜け、黒雲雀号もまたINゲートをくぐり抜ける。いよいよレースは後半戦。予選一位の中村さんが勝つか、最速タイムの小池さんが勝つか。ランサー11号は最後の難関アップ&ダウンを駆け下りてR600目指し全力疾走。一方の黒雲雀号は立体交差をくぐり抜けて、これまた最後に控えし左レーンチェンジに進入。このまま両者譲らずゴールインか、と思ったその時、なんと黒雲雀号が左レーンチェンジで唐突にコースアウト。この間、ランサー11号は歓喜のゴールを駆け抜けていた。優勝タイムは15.35秒。中村さんのこの日の最速タイムである。決勝戦に最速タイムが出るように調整して臨む、考えてみれば頂点を極める決勝戦で勝ちにいくのだから当たり前のことだが、これがなかなかできない。これをサラッとやって見せた中村さん、ランサー11号には脱帽。おめでとうございます。そして突然のコースアウトで二位に甘んじた小池さん、黒雲雀号。毎回走るごとにタイムへの挑戦を続け、大会のベストタイム賞に輝いたその攻めの姿勢は、見ている方々の脳裏に十分焼きついたはず。ありがとうございました。
表彰式、閉会式
(株)ルネサスソリューションズ・執行役員常務の山田大会実行委員長による表彰式。中村さん、小池さん、深澤さん、そして星野さんの清々しい表情が印象的でした。おめでとうございます。最後に(株)ルネサスソリューションズの須田社長の閉会の挨拶で第3回ルネサスマイコンカーラリー競技大会は幕を閉じた。
最後に
決勝戦終了後のエキシビションレースに快く応じていただいた中村さんと小池さん、ありがとうございました。大会終了後の会場撤収に手を貸してくださった選手の皆さん、観客の皆さん、ありがとうございました。最後に、北から南から、西から東から参加して頂いた選手の皆さん、応援に駆けつけて下さった皆さん、そしてスタッフの皆さんに感謝いたします。皆さんのご協力の下、無事、大会を終えることができました。(F)
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