走行直前のタイヤ車検
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スタート直前に祈りをささげる選手も
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昨年にも増してレベルの高い対戦が続いた
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午後3時15分。Advanced Classの部の決勝トーナメントが始まった。Basic Classの部が終了後、コースメンテナンスが行われ、例年通り予選とは逆走する形に変更された。このため、毎年のように波乱が巻き起こるが、例年に比べて予選上位車のコースアウトは少なく、しっかりと対策を立ててきたことが伺える。しかし、数多くのチャンピオンを輩出してきた香川県立三豊工業高等学校の一角が、1回戦で早くも崩れる。予選11位の長谷川優君が17.30秒と抑え気味に走ったのに対し、予選22位の石川県立工業高等学校・野原聡一郎君が全開モードで予選タイムを遥かに上回る17.24秒を計測。不覚の敗戦を喫した長谷川君は、思わず天を仰いだ。野原君は続くベスト16でも、予選6位の長野県駒ヶ根工業高等学校・征矢昌巳君を退け(コースアウトにより)、上位キラーぶりを発揮していた。ベスト16は、他のレースでも予想外の出来事があった。予選3位でのぞんだ岐阜県立可児工業高等学校・中島雅斗君が、立体交差上で壁に激突。予選19位の熊本県立御船高等学校・佐藤友哉君が勝ち進んだ。会場の注目を集めた好カードは、昨年覇者の熊本県立球磨工業高等学校・土屋大樹君と、岐阜県立可児工業高等学校・大脇雅也君の対戦。トーナメントを前に「今ひとつ調子が上がりません」と不安を口にしていた土屋君のマシンは、あえなくコースアウト。飛ぶ鳥を撃ち落とすような大脇君の勢いは、ディフェンディングチャンピオンをも飲み込んでしまった。かくしてベスト8に進出したのは、伝統校の一角・富山県立大野沢工業高等学校から3選手、同じく実力校・熊本県立球磨工業高等学校と熊本県立御船高等学校からそれぞれ1選手、岐阜県立可児工業高等学校から2選手、石川県立工業高等学校から1選手という顔ぶれ。まさに、新興勢力と伝統ある実力校との争いとなった。レースは、いきなり波乱含みの展開に。ここまで安定した走りで上位を虎視眈々と狙っていた富山県立大野沢工業高等学校・竹内悠貴君は、スタートバーが開いても走りだせず、対戦相手で優勝候補の熊本県立球磨工業高等学校・三輪大樹君のマシンに道を譲るため持ち上げ再走となった。ところが、難なくゴールすると思われた三輪君のマシンが、特に難しいとは思われないコーナーでまさかのスピン。コースアウトにより失格となってしまった。唖然とした空気の中、規定通り再スタートを切った竹内君のマシンが無事に完走。三輪君は「あせって全開で挑んでしまったことが、裏目に出ました」と肩を落とした。一方、予選7位からじわじわと調子を上げてきた富山県立大野沢工業高等学校・坂田晃君と対戦した岐阜県立可児工業高等学校・大脇雅也君は、16.22秒とトーナメントでの最速タイムを計上。坂田君も16.59秒というハイレベルのタイムを出したものの、一歩及ばなかった。また、大脇君のチームメイトにして最大のライバル竹村洸紀君も、北信越地区大会の覇者で富山県立大野沢工業高等学校・平野司君と対戦。16.71秒を出した平野君に対し、竹村君が16.61秒で勝ち上がった。ベスト8最後のレースは、熊本県立御船高等学校・佐藤友哉君が勝ってベスト4に進出。本人は「相手がコースアウトする幸運に恵まれました」と謙遜していたが、運も実力のうちである。
竹内君(左)vs竹村君(右)
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大脇君(左)vs佐藤君(右)
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チームメイト同士の決勝戦は大脇君(左)に軍配
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準優勝・竹村君(左)と優勝・大脇君(右) おめでとう!!
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準決勝第1レースは、富山県立大野沢工業高等学校・竹内君と岐阜県立可児工業高等学校・竹村君のカード。両者一歩も譲らない展開で、ほぼ同時に最終コーナーを立ち上りゴール。16.61秒を出してコンマ07秒上回った竹村君が、決勝に進出した。第2レースは、16.17秒とまたもタイムを縮めた岐阜県立可児工業高等学校・大脇君の独壇場となった。続いてレースは、3位決定戦の舞台へ。スタート後、富山県立大野沢工業高等学校・竹内君はまるで祈るかのように胸に手をおいてマシンを見守る。しかし、ここまで積み重ねてきたタイムに一日の長がある。終始、熊本県立御船高等学校・佐藤君をリードしたまま表彰台の一角をゲットした。「全国大会では優勝を狙っていました。でも、決勝に残った二人は本当に強かった。悔いはありません」と微笑んでいた。さて、いよいよ「ジャパンマイコンカーラリー2010全国大会」のフィナーレを飾るレースが始まる。栄えあるファイナリストとなったのは、くしくも岐阜県立可児工業高等学校のチームメイトである。「普段の練習から彼の速さは際立っています。自分は精いっぱいやるだけです」という竹村君に対し、「今まで頑張ってきた成果を出したい。どちらが勝ってもおかしくないです」と大脇君。スタートバーに並んだ両者のマシンは、どちらも徹底的な低重心化を図ったというだけに、まるで双子のようによく似ている。色鮮やかな発光ダイオードの点滅も、シンクロして見えてくる。一瞬の静寂の後、矢のように解き放たれた2台のマシンは、多くの選手を苦しめた難所を軽々とクリア。マイコンカー技術を極めた、見事な走行である。最終コーナーはわずかに大脇君のマシンがリード。そのまま、すべての挑戦者の後塵を拝すことなく、ゴールゲートへと飛び込んだ。レース後、「結果には大満足です」と、竹村君は納得顔。大脇君は「指導いただいた先生をはじめ、チームみんなの勝利です」と胸を張った。
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